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先日FeedBack - Yet Another RSS SearchというRSSリーダーと連携するBlog検索をたまたまhail2u.netで知り、何となく'wales'で検索してみた。最近書いたうちの記事が上位に来て何となく安心(28/4/2004現在)。

私の記事のすぐ後にうんちくを騙る(語るにあらず)さんの「イギリス女王はドイツ人?」という記事があったので、興味深く読ませていただいた。「蘊蓄」を標榜するサイトだけあって見識はさすがだが、ちょっとばかしつっこみの血が騒ぐ部分があったので、せっかくのでつっこませていただこうと思う(当たり前ですが、喧嘩を売っているわけではありません)。

誰も[エリザベス二世女王に]ドイツ人なんか言わないんだけど

これはいきなり最後の方からの引用ですが、まぁ、何というか、パブにいる若いイングランド人大学生に王室のことをどう思っているか聞いてああ、ドイツ人ね«Ah... German.»とあっさり言われてしまったのは私です。

以下の話ですが、日本語で「~人」といった場合、文脈によって国籍保有者を指していたり、民族(人種)を指していたりすることを念頭に置いて読んでください。別に英語やその他の言語はそうではない、という事を言っているのでありません。念のため。

今のイギリス王朝(ウィンザー朝)は、イギリス王家の血を引くドイツ貴族を連れてきており

確かに現ウィンザー朝すなわち・サクス・コウバーグ・ゴータ朝はドイツ系貴族です。実際サクス・コウバーグ・ゴタいうのはドイツ語のザクセン・コウブルク・ゴータの英語系です。このサクス・コウバーク・ゴータ朝というのは、ヴィクトリア女王と結婚したアルバート公が当時のザクセン・コウバーク・ゴタ家当主エルンスト一世の次男だったことに由来します。従って、英国のサクス・コウバーグ・ゴータ朝はヴィクトリア女王の後を継いだエドワード七世から始まります。

上の引用で、注意しなければならないのは、貴族と言ってしまうと、英国的な貴族や日本の華族を思い浮かべてしまうかも知れないというところです。ところが、ザクセン・コウブルク・ゴータ公はその当時実際にコウブルクおよびゴタその他を領有していました。1826年までザクセン・コウブルク・ザールフェルト公としてコウブルクとザールフェルトを領有していましたが、ザクセン諸公の領地整理の結果、ザールフェルトを手放しゴータを手に入れました。そういった領有の事実だけでなく、ザクセン・コウブルク・ザールフェルトもしくはゴータ公家は、神聖ローマ帝国(後にはウィーン体制)によって君主権«Soverign Rights»をコウブルクに付随する形で1717年以降認められてきました。いわゆる領邦君主というようなものですが、これは単なる貴族ではなく国王や皇帝らと同じく君主としての格を有していました。

より正確に言うと、1826年の交換で成立したのはザクセン・コウブルク・ウント・ゴータ«Sachsen-Koburg und Gotha»、英語で言うとSaxe-Coburg and Gothaと言うことになります。これは何かというと、当時はコウブルクおよびゴータが別々の公国であり、いわばエルンスト二世を元首とする同君連合だったということです。これは両国共通の憲法が1852年に成立するときまで続きます。

ザクセン・コウブルク・ゴータ公家自体はエルンスト二世が嗣子なく没したために、その弟であるアルブレヒトすなわちアルバート公の子孫が受け継ぎました。もっとも、英国とザクセン・コウブルク・ゴータ公国が合同するのは宜しくないということで、すったもんだの末、アルバート公とヴィクトリア女王の次男エディンバラ公アルフレッドに、その断絶後は女王の四男アルバニー公レオポルドの子である第二代アルバニー公が継ぎ、その子孫が家系を繋いでいます。

もっとも、これ自体は補足やあら探しのようなもので、引用先の間違いではありません。ただ気になるのは以下の文と総合したときです。

初代のジョージ一世は英語が分からず、政治は全部お任せしてたようです。その前は、スコットランド人だったり、オランダ人だったり、フランス人だったりデーン人だったりで ... ウィンザー朝にしてもその前はドイツ風の王朝だったのを第一次世界大戦の敵国ドイツ風の名前を改名したものでその前は、 サックス・コーバーグ・ゴータ朝(もっと前はハノーヴァー朝)でした。

おわかりのように、先の引用に続く部分の「貴族」というのはハノーヴァー朝のジョージ一世のことでしたし、最後の方ではまるで、サクス・コウバーク・ゴータ朝とハノーヴァー朝を同一視しているようにとられかねない書き方をなされています。先に述べましたように、サクス・コウバーク・ゴータ朝はヴィクトリア女王の夫君を祖にしているからこそドイツ系であって、ハノーヴァー朝のように王室の血を引くドイツの領邦君主をひっぱってきたわけではありません。

その前の王朝はと言うとスチュアート朝で、スコットランド人ですね。このときにスコットランド王国とイングランド王国が合併し、UK(連合王国)と成るわけですが。

これはちょっと微妙な言い回しですね。まず、連合王国が成立したのはハノーヴァー朝ジョージ三世時代の1801年の併合法によってであり、スチュアート朝アン女王の1707年の併合法によって成立したのはグレート・ブリテン王国です。ただ、合併という語を使わず、略称としてスチュアート朝成立以降のイングランド・スコットランド同君連合をグレート・ブリテン王国もしくは連合王国と呼ぶのは公式な略称として許容されます。この辺はいずれ書きたいと思いますが。

それから、スチュアート朝はそもそもスコットランドの王家ですので、「スコットランド人」と言っても良いようなもんですが、スコットランドのスチュアート家(もしくはスチュワード家)は実はそもそもノルマン生まれのアラン・フィッツフラールド«Alan Fitzflaald» (c1078-1114)に由来します。それからもっと遡るとノルマン生まれではありませんが、どのみちフランスの人です。このアランがイングランドのシュロップシャーに移住し、その子のウォルター・フィッツアランがスコットランドのHigh Stewardに着きます。 もっとも、このアランは初代スチュアート朝スコットランド国王であるロバート二世の七代前の祖先です。ジェイムズ六世(イングランド王としては一世)から数えると……15代前の祖先かな?

そんな前に遡ってどうするという声も聞こえますが、現エリザベス女王でもアルバート公の4代子孫ですし、ヴィクトリア女王自身もジョージ一世の4代子孫と以外と遡ります。この引用部分の次の段落でノルマン朝以降のフランス系王家についての言及がありますが、それに関してヨーク朝のエドワード五世はアンジュー朝の祖でフランス人といえるヘンリー二世の11代子孫です。

というわけで、このトピックからすると、スチュアート家も一概にスコットランド人と言わずにその出自を書いて欲しかったような気がします。

北部アイルランドに関してはクロムウェルの占領にさかのぼります。名誉革命の時はオレンジ公ウィリアムをオランダから国王として連れてきていますね。

これは間違いではありませんが、イングランドのアイルランド支配に関してはジョンのアイルランド領主«Lord of Ireland»の称号まで遡ると言っても間違いではありません。この称号によってその侵攻がいわば正当化できましたので。まぁ、ウィリアム三世の場合、連れてこられたというより野望のために自らやって来た、という方がしっくりいくような気もしますが、もちろんトピック的には間違いではありません。

あと、ついでに言いますとテューダー朝はウェイルズ系です。ヘンリー七世の祖父であるオーウェン・テューダー«Owen Tudor»は本来オーウェン・アプ・ティドル«Owen ap Tudor»といい、北ウェイルズはスノウドン出身、アングルシーなどを有した貴族です。ウェイルズ人に関する書物にはよく出ている話だと思いますが、この出自のためにバラ戦争後半のヘンリー・テューダー出現時、彼はウェイルズ貴族の支援を受けていました。もっとも、ウェイルズ貴族の期待もむなしくテューダー朝ではウェイルズのイングランド統合がよけいに進みました。

長くなってしまいました。確かに個々では関係ないことまでをも含めてごたごた言ってしまいましたが、結局これらはうちのサイトの趣旨、英国と称号を扱う、という観点によって書いたものです。従って、一般的な話で言えば、先方の記事に重大な瑕疵があるわけではありません。この記事のように、後からごたごた言う方が楽なのは明白ですから。というわけで、ご気分を害されましたら、どうぞご寛恕くださいますよう、お願いいたします。

リンク切れのため引用元のリンクをInternet Archiveのリンクへ差し替え(2009/02/08 14:54)

初版公開日2004-04-29T02:56:00+09:00
最終更新日2009-12-05T14:15:23+09:00

Tag: 称号ツッコミ 英国王室


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Last-modified: 2009-02-08 (Sun) 23:54:41 (JST) (792d) by dzlfox

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