スペインのアストゥリアス公に女子誕生 anchor.png

10月30日早朝に懐妊中だったスペインのアストゥリアス公妃レティシア妃が女子を出産されました。予定日より3週間ほど早かったとのことでしたが、ひとまず母子共に安泰のようです。

この継承順位第二位となる王女は「レオノール」(Leonor)と名づけられました。LeonorとはEleanorのスペイン語形で、どうやら過去のスペイン諸国の女王にはLeonorという人物はいないようなので、仮にご即位されると初のレオノール女王という事になります。スペインのナンバリング法も歴史的な経緯からかなりややこしいので、それを避ける為に君主として使われたことのない名前にしたのではないか、ともいわれています。

ということなのですが、現在のスペインでは男子優先長幼制«Primogeniture»をとっていますので、仮に弟が生まれると順位は下がります。しかし、現在のスペインの政権は左派の社会党なのでザパテロ首相は「女性王族に対する男女差別だ」として絶対長幼制«Absolute Primogeniture»へと法改正しようとしているようです。どうも、現在のムードからしてそっちへ流れて行きそうな気がします。

女性に継承権を認める、認めない、もしくは性別に関わらず出生順に継承権を与える、こういった法の違いをさして「進んでいる」「遅れている」という議論をするのははっきり言って馬鹿げていますし、そういう評価の仕方をするのも馬鹿げた話です。この辺は概念史を勉強するとわかりやすいのですが、「現在」が「過去」よりも優れているわけではない、したがって「進んでいると思われる概念」が「遅れていると思われる概念」よりも優れているかどうかはわからないということになる。そもそも王位と慣習というものが切っても切り離せない以上そういった議論はあまり意味がない。男女平等という観点からこれを論じるのもあまり意味がないと私は思います。まぁ、ここはそういった政治的な是非を問うサイトとではないのでここら辺でやめておきますが。

ま、実際スペインの民衆がどう判断するかですが、そもそもスペインは女系を容認していますので、実際スペインの場合日本よりも問題にはならないかもしれません。一応ブルボン(カペー)男系とはいえ、そもそも「現存するカペー長系」という金看板もとっくにスペイン王位とは離れていますし。ああ、でもやはり王室としてはブルボン家という看板は守りたいでしょうから、イザベル女王の様に同門と結婚する事になるのでしょうか。ブルボン家ということがスペイン王室のアイデンティティとなっている事を考えると、やはり障碍があるとはいえますね。まぁ、今となっては然程のものではないでしょうか。

ところで、今回お生まれになった王女は以下の称号となります。

  • Her Royal Highness Doña Leonor Infanta of Spain

おそらく、Leonorのあとに色々ミドルネームが付くんでしょうが、分かり次第付け足す事にします。

さて、上記のInfanta of Spainについては説明が必要かと思います。これはスペイン語のInfanta de Españaの英訳です。InfantaはInfanteの女性形となります。

スペイン語にもprinceという語はあるのですが、スペインでは国王の子、孫をprinceとはいいません。スペインでprinceというと「小国の君主」という意味のほうでして、例えばPrince de Asturiasといった称号に残っています。これはフランスと同様の慣習です。フランスでも国王の子、孫(時代によってはDauphinの孫も)princeではありません。fils/petit-fils de Franceといいます。

一般的な英語ではPrincess Leonor of Spainという様に書かれるでしょうし、まぁ、それは間違いではないでしょう。昔は研究者も英語で書くときは英語的な英語形に直して書いていたのですが、最近は元の意味の違いを重視して、なるだけ元の語を残すような訳し方をするようです。Infante/aのほか、von/zu/deといったものやTsar/Autocratとか

これはTitle News Titbitsで流した記事の詳細版です。

初版公開日2005-11-01T13:05:00+09:00
最終更新日2009-12-05T14:15:21+09:00

Tag: 欧州君主家事情 スペイン王室 欧州大陸称号


Page Top

旧ブログ時代Writeback(s) anchor.png

Page Top

Comment(s) anchor.png

1: もつ (2005/11/01 15:44)
いつもご解説楽しく読ませていただいています。
こちらの知識が足りないもので質問ばかりになってしまいますが……。

Infante/Infantaを英和辞典で引くと
(スペインやポルトガルの,王位を継がない)王子
(スペインやポルトガルの,王位を継がない)王女
と載ってたりするんですよね。
英語の辞典でも国王の長男=Prince de AsturiasをInfanteから
除外するような書き方
(a younger son of a Spanish or Portuguese monarch)
がなされていたりするんですが、
アストゥリアス公/公妃はPrince/ss de Asturiasという称号が
あるから、Infanta/Infanteではないのか、そうであるけれども
Prince/ss号を持っているからそちらで呼ばれるのかどっちなん
でしょう?

あとDauphinやvon/zu/de・Tsar/Autocratに関しても手間で
なければどういうものか違いなどご説明をお願いしたいのですが。
2: dzlfox (2005/11/01 21:05)
もつ様、いつもありがとうございます。

エラー修正しました。お手数をおかけしました。

>Infante/a
>Prince de Asturias

あー、これは非常にややこしいのですが、辞書は間違っておりませ
ん。ただ、現アストゥリアス公自身はInfanteだというところが妥
当な見解です。これはちょっと考察を要しますね。今度書いてみます。

>あと、von/zu/de・Tsar/Autocratについても多少解説を
>お願いしたいのですが。

von/zuはドイツの、deはフランスのofのようなものですが、微妙に
用い方が違うので、von und zu Liechtenstein、de Luzembourgの
様に英語であってもofを用いずに原語を用いる傾向があるというこ
とです。
Tsar/Autocratはどちらもロシアの帝号でこれもかつてはEmperorと
訳されていましたが、最近ではより原語よりの語を用いる傾向があ
る様です。
3: dzlfox (2005/11/01 21:11)
>Dauphin

これはDauphin de Viennois(ドーファン・ド・ヴィエノワ)の略で、1349年ぐらいからフランスの継嗣の称号です。
よく、王国では皇太子ではなく王太子とすべきだ、という議論を見かけます。
まぁ、わたしは王太子は冗長表現だと思うので、太子という語を使いますが、英国のウェイルズ公やスペインのアストゥリアス公のように特有の称号がある場合はそちらを使いたいと思っています。
で、フランスの場合はこのDauphin de Viennoisがその称号となります。
4: もつ (2005/11/12 22:31)
ご回答ありがとうございます。
なんだか書いて欲しいことが山のようにあるような……。
これからも楽しみにします。
(また別件で質問してしまいましたが)
5: dzlfox (2005/11/14 13:18)
いえいえ、少しでもお役に立てれば幸いです。
本当はもっと書きたいことが色々あるのですけど、時間がない・・・。

コメントポスト(オープンはオープンに、クローズドはクローズドに書き込まれます)

題名
ゲスト名
投稿本文
より詳細なコメント入力フォームへ

コメント一覧

0件ヒットしました 返信 閲覧 投票数 平均点 トピック開始 最新投稿

Front page   Freeze Diff Backup Copy Rename Reload   New Page Page list Search Recent changes   Help   RSS of recent changes (RSS 1.0) RSS of recent changes (RSS 2.0) RSS of recent changes (RSS Atom)
Counter: 512, today: 2, yesterday: 0
Last-modified: 2009-09-22 (Tue) 23:03:45 (JST) (895d) by dzlfox

最新記事一覧
投稿一覧
コメント一覧
ログイン
ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失