欧州における「即位」についてのメモ 
もうかなり前の話になってしまいますが、モナコ隠し子騒動に関するIneffable Voiceの方の記事で、先日即位なされたモナコのアルベール二世
と書いたところ、王国LINKさんの方でこの様な疑問が挙がっているのを見ました。
Ineffable Voicesさんによると、アメリカにもジャスミンという名前の13歳の隠し子がいることが報じられたとか。本物かなぁ? ところで、上記記事では、すでに“アルベール2世”と書かれていますが、もう即位したという扱いでいいんでしょうかね?
せっかくなので、ちょっとメモしておきます。
近現代のヨーロッパでは、基本的に前君主が崩御した瞬間に継承第一位のものが即位する、ということになっています。例外としては以前扱ったabeyanceのケースがあります。もちろん万が一法でいろいろ決まっていた場合にはそちらが優先されますが。
したがって、モナコのケースでもレーニエ三世が崩御した段階でアルベール公世子が即位し、アルベール二世となったことになります。もちろん、英国などでは統治名は詔で決めますから、決めた段階で遡及的にその統治名が適用されます。わかりにくい説明で申し訳ありませんが。
そもそもメディアが中々アルベール二世と書いていなかったのは、当時の記事にもありましたように、七月六日に喪が明け同十二日に即位式が行われることに起因しているようです。たとえば、Daily Sports Onlineの記事では(消えるかもしれないのでGoogle Cacheへリンクしています):
モナコ公国当局者は、今年四月に死去したレーニエ三世公の服喪期間が終わる七月六日まではコメントできないとしている。アルベール王子は同十二日に元首のモナコ公に即位する。
としています。しかしながら、昔はともかく近現代では、モナコの即位式も英国の戴冠式と同様に儀式的な意味合いでしかありませんから、先に述べたように、既に彼はモナコ公アルベール二世であり、七月十二日にモナコ公となるわけではありません。
「即位する」という語が、儀式的に即位式で即位する、という意味にもとれるかもしれないので、それはそれでいいのですが。
では、今現在件の人物をアルベール二世と呼ばずに、アルベール公子と呼ぶことは全く間違いなのか、というとそうでもないように思います。英国貴族社会では、貴族が死んだとき、その葬儀が終わるまで、襲爵するものは元の称号で呼ばれる、という慣習があります。もしこれがモナコにも当てはまるならば…。レーニエ三世の葬儀自体は終わっていますが、服喪期間が解け、即位式までは、元の称号を使う、という慣習があるのは、十分可能性がある所です。モナコ公室のサイトの記述を見ると、何となくそれがあり得る感じもします。しかし、これは一種の社交儀礼であって、繰り返しますが継承の時期そのものには関係しません。
さて、日本の皇室に関してですが、旧皇室典範以前には「践祚」と「即位」という観念がありました。それぞれが、微妙に定義を変えつつ旧皇室典範にも採用されました。しかし、現皇室典範には「践祚」の語が用いられていません。そこでは「即位」と「即位の礼」が完全に別物となり、前者は近現代の欧州における「即位」の概念として用いられています。
天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
この条文の「直ちに」という語がそれを表しているように思います。個人的には、旧皇室典範の「践祚」の用い方もかなり欧州的な意味合いに近づいたものだと思っていますが、より考察することが必要でしょう。
| 初版公開日 | 2005-06-23T16:07:00+09:00 |
| 最終更新日 | 2009-12-05T14:15:19+09:00 |
Tag: 欧州君主家事情 欧州大陸称号 称号考察 相続法 モナコ公家
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先日は愚ブログでのコメントありがとうございました。
一つお聞きしたいことがあるのですが、某誌、山折哲雄氏の随筆に、エリザベス二世登極の際は、女王と議会の間に、父王崩御とともに即位したとみなすか、否かで対立があった、と記してありました。この場合どちらの考え方が有力なのでしょうか?議会が喧嘩売っただけなのでしょうか?
そう言えば、「昭和六十四年正月七日践祚」という表記の場合は「剣璽等承継の儀」を以て「践祚」と看做しているようですが、仰る通り現皇室典範に「践祚」の項はありませんし・・・
恥ずかしながら、寡聞にしてその山折氏の仰るエピソードは知りませんでした。
しかし、その件に関して議会が対立というのは、なんか奇異に感じますね。
機会があればa.t.r.等で聞いてみたいことですが。
二重投稿申し訳ありません。
確か王位継承法が何とかで、外務省も意地悪?したとかいう内容だった気がしますが、何分おぼろげな記憶で(汗)