国営諫早湾干拓事業(長崎県)と有明海の漁業被害との因果関係を審理していた国の公害等調整委員会は30日、ノリ不作など漁業被害の発生は認めたが、科学的なデータ不足などを理由に干拓事業との因果関係は認定できないとし、漁業者らが求めた原因解明の申請を棄却する裁定を下した。
上記のような「データが不足」のほか「書類不備」等といった理由は、断りにくい案件を断るときの常套手段で、それは時には有効である。しかし、今回に限っては、はっきりいってはかげた話に思える。
次のように事態を単純化して考えて見よう。
- 因果関係は無い → 干拓を続ける
- 因果関係がある → 干拓を中止(停止)する
一般的にいって、因果関係の証明責任があるのは後者を主張する方である。「因果関係が無い」ことを証明するのは「ある」ことを証明するよりも難しいからである。今回の最低もこの原則に従っているのであろう。
しかし、今回のようなケースの場合、前者の証明責任がよりクロースアップされるべきである。
なぜなら、干拓事業は不可逆であるからである。いったん干拓をすれば、もはや元には戻らないのだ。JPEGファイルを何回も保存していくと画質が著しく劣化していくように、干拓事業を続行していけば、元の環境から著しくかけ離れていく。
このことを考えれば、
(1)ノリ不作の要因となる赤潮の発生や増加、増殖のメカニズムには未解明の部分がある(2)タイラギなどの被害の原因解明が不十分だ
と言う理由は非常に不十分なものであるといえるだろう。因果関係が科学的に否定されたわけではなく、科学的には良く分からんから却下、なのである。
先に述べたように、確かに「因果関係が無い」ことを証明するのは難しい。しかし、データを集める事はできる。データを集めろ、と言うのは今回の最低でも同様の意見である。ならば、選択するべきは不可逆な前者ではなく、後者であるべきでないだろうか。
もっとも、後者の選択肢にはそれなりに問題もあるのだろう。当初の目的の治水工事自体はもはや大した意味はなさそうだけも、経済活動などの観点もあろう。
だからこそ、曖昧な理由で結論を下すなら、もう少し何とかしてほしかった気分である。