現代日本では幻想文学はどうも所謂ライト・ノヴェルというカテゴリーの上に集約されているような印象を受けます。まぁ、そもそもそのカテゴリーはとてつもなく広いものですので、商業小説は何でも飲み込んでしまいそうですが。
「ライト・ノヴェル」という語にどうしてもネガティヴなイメージがまとわりつくのは、10代がメインターゲットということもあるでしょうが、どうしても商業ベースで粗悪な作品が濫造されていることもあるでしょう。しかし、カテゴリーというラベルでくくってしまうと、玉石混淆という語の通り、悪いものも良いものも混じり合ったまま、単一の評価をそのカテゴリーそのものに与えかねません。実際、あまりにも広い範囲を含むカテゴリーですから、良作もたくさんあります。
その中で、1990年代の幻想文学における傑作の一つが小沢淳女史の『千年王国ラレンティア』シリーズ(全五巻+外伝一巻)でしょう。同女史の他の作品は、本来の耽美派ホモセクシャル的な傾向が強く今ならボーイズ・ラヴ系に分類されそうな作品が多いのですが、同シリーズではその傾向は押さえられつつも、耽美さと鬱屈さと、それらをぶち破る力強さに満ちた作品に仕上がっています。
個人的な感想を述べますと、シリーズの冒頭、即ち第一巻の冒頭における、主人公とヒロインの一人との邂逅の場面が非常に美しく、その印象深い導入部分によって、一気にシリーズに引き込まれてしまいました。
その小沢さんですが、以前からMoon Cafeという自身の公式ウェブサイトで制作日記を公開されていたのですが、2004年12月からその日記に替わってPale Moonというblogを始められました。以前の日記では、創作のための資料などにも触れられているので、こちらも期待したいです。
- 千年王国ラレンティア・シリーズ
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- 破壊王の剣―あるいは神に傷を負わせた者の物語 8. 1991
さて、この様に傑作を生み出しておられた小沢さんですが、最近どうも見かけないなぁ、と思っていたところへ二年ほど前にウェブサイトを発見したのですが、やはり最近はあまりこういった作品を書いておられないようです。その理由として、「作品解説: シリーズの展望」のページで:
255 やはりこういう形の異世界ファンタジー(というより架空の歴史物語のつもりでしたが)というのは今の私には書けないというのが大きい。
と書いておられます。そういった異世界ファンタジー作品群のファンだった私としては非常に残念なのですが、創作という関係上これは仕方ないことでしょう。最近作は『眠れぬ夜のカナリア』だそうです。