[称号・名/称号]

君主の継嗣の特有の称号 PART I / 2005-12-15 (木)

現存する君主国における、君主の継嗣の称号について記します。このサイトでは特有の称号を有している継嗣はその称号で呼ぶことにしています。そこで改めて簡単に考察してみることにしました。

"cr"は宣下(授爵)を必要とする。"aut"は必要な要件を満たすと自動的にその称号を帯びる。

  • 英国 (The United Kingdom)
    Prince of Wales (and Earl of Chester)[ウェイルズ公] "cr"

    本来はイングランド王位の継嗣。法定推定相続人«heir apparent»でなければならない。

    Duke of Cornwall [コーンウォール公爵] "aut"

    本来はイングランド王位の継嗣。君主の子で且つ法定推定相続人«heir apparent»でなければならない。

    Duke of Rothesay (Earl of Carrick, Baron of Renfrew, Lord of the Isles, Prince and Great Steward of Scotland) [ロスシー公爵] "aut"

    本来はスコットランド王位の継嗣。君主の子で且つ法定推定相続人«heir apparent»でなければならない。それぞれの称号の由来は別々。

  • オランダ (The Kingdom of the Netherlands)
    Prins/es van Oranje [オラニエ公] "aut"

    英語ではPrince of Orange。1815年のKingdom of the Netherlands以来継嗣の称号となる。

    オラニエ公の妃の称号について。19世紀にはオラニエ公妃«Princess of Orange»の称号を宣下されて有している人もいたが、現在は基本的に妃はその称号を帯びない。おそらく、絶対長幼制が採用され、女子でもheir apparentになるために、女性系の称号を女子法定推定相続人のために取っておく必要があるからと思われる。

    ただし、慣例的に妃をPrincess of Orangeと呼ぶケースも見られるかもしれない。しかし、もちろんこれはオフィシャルな物ではない。
  • ベルギー (The Kingdom of Belgium)
    Duc de Brabant [ブラバント公爵] "aut"

    1840年12月24日のRoyal Decreeによって国王の長男は自動的にDuc de Brabantとなることになった。同Decreeはレオポルド一世が継嗣のレオポルド王子を封じたもの。このことは1993年(もしくは1994年)に首相の国会答弁によって確認された。

    ブラバント公爵の継嗣はかつてはComte de Hainault«エノー伯爵»だった。これはレオポルド一世がブラバンド公爵レオポルド王子の継嗣レオポルド王子を1859年6月12日のRoyal Decreeで封じたものが最初。このレオポルド王子は父親の即位に従ってブラバント公爵になったが父に先立って薨去。

    1930年9月10日のRoyal Decreeによってこのエノー伯爵は宣下によらず自動的にブラバント公爵の継嗣に賜ることとなった。

    しかし、これらは2001年10月16日のRoyal Decreeによって改正される。おそらくこれは絶対長幼制への変更に即してのことだろう。というのもその当時ブラバント公爵フィリップ王子夫妻にお子が生まれる直前だったからである。

    まず、ブラバンド公爵の要件が、「君主の最年長の嫡出男子」から「君主の最年長の嫡出子」に変更される。また、エノー伯爵という称号を定めた上記のDecreeが廃止された。そのかわり、ブラバンド公爵が父王に先立って薨去した場合、その継嗣(かつてならエノー伯爵を帯びていたであろう人物)がブラバント公爵を帯びる。

    逆に言うと、ブラバント公爵の継嗣は現在特に特有の称号を帯びないことになる。

スペインのアストゥリアス公およびその他の君主国はPART IIで。

1: Lucius (2005/12/15 01:38)
日本の「皇太子」「皇太孫」も称号のうちに入るのかしら(笑)そういえば、男子優先型の皇室典範改正案が通ると、天皇の娘が皇嗣である場合には皇太子の称号はなしということになりますね。
2: dzlfox (2005/12/15 10:41)
Luciusさまお久し振りです。
一応Crown Prince系のものも「称号」ととらえています。
#最初日本のの「皇太子」について少し書いていたんですが、後回しにしました(笑)
最初のほうの文では、ウェイルズ公のような特有の称号を特に念頭においていますが、Crown Princeというプレーンな称号を帯びている人はそちらで呼びます。

男子優先の長幼制の場合、まぁ、heir presumptiveにしかすぎませんから、ある意味仕方ないような気もします。
まぁ、スペインのような例もありますが。

どーせなら、いっそのこと「儲君」を意味を変えて復活させるとか・・・。
3: 西京子 (2005/12/15 21:19)
dzlfoxさま。
色々、勉強になります。
宣下されるものと自動的に帯びるものと二通りあるのですね。
ところで、宣下された場合、日本の爵記のように文書で何か貰えるのでしょうか?
ちょっと気になります。

「儲君」の復活ですか、西洋風に、いっそのこと「百済王」などの類の称号では駄目でしょうか(オイ)
歴史的背景としては、十分可能な気もしますが・・・
4: dzlfox (2005/12/15 22:36)
西京子様。
AMU様の掲示板での議論も拝見しています。あの記事に対する記事も今週末に書きます。

宣下・授爵はLetters Patentによってなされます。
これが爵記に相当するかと思います。
もっともこれはその名の通りopen letterなのでGazetteに載せられます。
国によってはRoyal Decreeによって叙されることもありますが。その場合はどうなのかなぁ。

>百済王
天皇は「某国系」論がヒステリックに爆発しそうな(笑)

個人的には百済王は百済王氏を思い起こすので、敬意を表して避けた方がいいような気がする、とマジレスします。
5: あるファン (2005/12/15 22:53)
日本の皇太子も「東宮」という意味では宣下がありますよね?
立太子礼というものが存在していますし・・・

今の皇太子も、平成天皇即位の後、一応は
皇太子と呼ばれても変ではないけれども
正式には立太子礼の後からで、それまでは
NHKとか正式なニュースなどでは「浩宮殿下」と
呼ばれていたような覚えがあります。。

ちなみに、女性の皇太子の場合は
昔「女(にょ)東宮」と呼ばれたと
歴史の授業で習ったような覚えがあります。
(皇女で繋ぎ的なピンチヒッター即位ではなく
 正式な皇太子→天皇と即位した孝謙=称徳=天皇と
 徳川家康の孫、明正天皇の時の話)
6: dzlfox (2005/12/15 23:26)
あるファン様、こんばんは。
>日本の皇太子も「東宮」という意味では宣下がありますよね?
立太子礼というものが存在していますし・・・

皇室典範(昭和22年)
第八条 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。

という規定により、皇嗣たる皇子は自動的に皇太子になります。
立太子令というのはいわゆるinvestitureですので、宣下・授爵とは別の行為です。

女東宮(にょとうぐう/おんなとうぐう)という語は確かに存在するのですが、昔の東アジア的な指名制での女性の東宮とheir presumptiveの女性の東宮とはいささか性質が異なっているように思います。
7: もつ (2005/12/16 17:07)
宣下・授爵等々と単なる儀礼的な式がごちゃごちゃに書いてある
場合もありますね……。
autなのに、儀式はある程度の年齢に達してからなどという場合
だと、システムを知らないと混乱してしまいます。
(コーンウォール公爵も式があったような???)
「儀礼称号」の類を正式な爵位と同等に書いている人もいて、
無知な私くらいだところりとだまされてしまいます。
8: Lucius (2005/12/17 02:43)
おひさしう。特定の称号といえば、女性天皇や内親王の夫の称号をどうするんだというお話がよくありますが、別に「陛下にしなきゃ」とか「皇后と同様の新呼称を定めなきゃ」とか変に対称性にこだわらずに、親王か王にして宮号を賜ればそれでいいじゃん、と私などは思ってしまうのですが(笑)やっぱりその辺は譲れないところなんでしょうかね~。<男女同権を気にするあたりからは
9: dzlfox (2005/12/20 09:31)
もつさま。
王位・爵位の継承に関してもそうですが、慣習的な部分が大きいので余計に混乱すると思います。
儀礼称号なんてのはその局地ですが、英国の場合はきっちりとしたpeer=nobleなシステムがある分まだだましでして、フランスなんぞは公然と詐称していて且つ社会的に受け入れていたわけで、本当にじっくり見ていかないと訳がわかりません(笑)
#コーンウォールのほうはinvestitureはなかったような気がしますが、機会があればじっくり調べます。

Luciusさま。
やはり「男女平等」を無理やり女性・女系継承の大義名分にしてしまった限りは引くに引けない部分でもあるんでしょうね。
まぁ、平気でダブルスタンダードを振りかざすよりはマシかも知れませんが(笑)
#うーん、他に何か書こうと思ってたのだけど、思いっきり度忘れしてしまった・・・
10: もつ (2005/12/20 20:16)
> #コーンウォールのほうはinvestitureはなかったような気がしますが、機会があればじっくり調べます。

たしか、何かが同時じゃなかったような気が……。
単純にPOWの方だった気もします。
記憶が曖昧で申し訳ありません。
思い出せれば報告します。
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