最近夏バテ気味なことと多忙なこともあって更新が滞っていましたが、またじっくりとやっていくつもりです。
今回から、数回のシリーズで「婿殿」に関する考察をしていきたいと思います。うちらの世代では「婿殿」というと、必殺仕事人シリーズで婿養子の中村主水(藤田まこと)をいびる菅井きんを思い出しますが、それと似たような話で、女王の夫君、女性貴族の夫君といった人らに改めてスポットを当てたいと思います。
それに先立ち、先ずjure uxorisという概念を理解せねばなりません。'jure uxoris'というラテン語は英語では'by/in right of a wife'と訳されますから、日本語では「妻の権利によって」という意味になります。これは要するに「妻の権利を夫が代行する」といったような意味です。
ラテン語は詳しくないので発音は自信がないですが、【ユレ・ウクソリス】でしょう。ロマンス語系言語並びに英語では'jure'が【ジュレ】と読まれるでしょうけども。
この代行ということを少し考えてみます。
中世の欧州(イングランドに限らず)の慣習法においては、不動産(領地など)、称号・爵位を相続・所有する女性の夫は、それらを所有するだけでなく、それらを自らの物と同様に自由に用いることができます。私有地・領地などからあがる地代及び収益も自由に使えます。
つまり、夫の権によって、妻の所有権がそっくり夫に移し変わるようなことになります。
動産に関しては違う概念(coverture)によって、結婚時に夫の物となります。
先に書きましたように、称号や爵位もこれに関連してきます。現代の英国法では、妻の爵位が上でも、夫はそれに追随して昇格することはありません。しかしながら、上記の中世の慣習法に従えば、昇格することになります。
たとえば、女性の男爵The Lady Lewishamが騎士であるSir William Daviesと結婚するとします。現代の英国では、夫の称号は変わりません。
しかし、このカップルが中世イングランドの人だとすると、jure uxorisによると、夫は、Lord Lewishamとなります(名乗る権利を得ます)。家系図などでは、William, jure uxoris Lord Lewisham等と記されるでしょう。この場合、妻がBaroness in her own rightであることには変わらないことに注意。
さて、彼が得るのは称号だけに留まりません。中世の薔薇戦争以前でしたら、男爵は領主権もついてきますから、その領地及びその収入を夫が自由に使えることになります。
問題は、封建制においてその頂点に立つのは各君主ですから、 各国君主にもこれが適用されることです。これが結構欧州史に関連してくるので、次回からそれも考察していきたいと思います。