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この記事は考察の主な内容に訂正すべき点があることがわかりました。訂正事項については訂正記事「『小公子』におけるセディの称号について再考察および訂正 」を御覧下さい。
先の「独身の貴族」に関する記事のp.s.はサウスアイランド公の掲示板における『小公子』に関するポストに対してのものでした。この度、「セドリック」と題した記事を御自身のブログ自治領にポストなされたので、興味深く読んでみました。私は小さい頃から『小公子』には馴染みがないのですが、こういう文学作品における称号を調べるのが大好きだったりするので、同じご趣味をお持ちの公にまずは敬意を表したいと思います。その上で、私の見地からいろいろとツッコミを入れてみましょう。とりあえず、テクストはUniversity of Virginia LibraryのElectronic Text Centreウェブサイトに掲載されているe-text/html版Little Lord Fauntleroyを参考にします。邦訳版に関しては本邦初訳である若松賤子訳『小公子』のe-text/html版を参照します。本記事を読む前に、まずサウスアイランド公の「セドリック」を一読してください。
セドリックの父の場合なんですが、その前に、よくわからないんですが、サウスアイランド公国のポストではJames Errolとなっていますが、上記の英語版では父の名はCapt. Cedric Errolとして出てきます。つまり主人公のセドリックは父親と同じ名前ということになっています。ここでは英語版に従っておきます。
さて、結論から申し上げると、おそらく原作者であるFrances Hodgson Burnettが間違ってます。こんな事放言していいんかな。
何故間違っているのでしょう。まず、
ここでもう一回、継嗣の
それで、伯爵の孫で継嗣、つまりは長子の長子の場合、いわば、子爵の長子で継嗣の扱いになります。伯爵の子が男爵の儀礼称号を名乗っている場合は男爵の長子で継嗣扱い。
『小公子』では、継嗣の称号として
Fauntleroyという姓を用いた爵位がErrol家に伝わっているのが変ですが、何らかの理由で女系を伝わってきたか、Errol家が昔はFauntleroyの姓を名乗っていたか、じつはこの爵位の'Fauntleroy'はFauntleroyという姓を元にしてつけられた地名だったりするか、どれかでしょう。子爵や男爵は姓を元にしているものが多いですが、地名のものも少なくありません。
Lord Fauntleroyが男爵であろうと子爵であろうと、主人公のセドリックの儀礼称号には関係ありません。「子爵の子息である継嗣」と「男爵の子息である継嗣」は同じ形の儀礼称号を使います。一般的にいうと:
- The Honourable 'Forename' + 'Surname'
Honourableは普通Hon.と略されて記されるので、以降はそう書きます。で、このHon.というものは、あまりにも正式すぎて封筒の宛先にしか使われません。したがって、口頭はもちろん一般的な書き言葉でも:
- Mr 'Surname'
と称されることになります
ですが、これはセドリックにはおそらく当てはまりません。というのは、これは当然父親が'Lord Fauntleroy'を帯びる身分、つまりは「子息である継嗣」で無ければならないからです。父親がLord Fauntleroyだからこそ、その息子はHon.を帯びるのです。
さて、セドリックの場合はどうでしょう。彼の父は二人の伯父が亡くなる前に逝去しています。もし、セドリックの父親が、二人の伯父が亡くなったあとになくなったのなら、一時的にも「伯爵の生存している最年長の息子」になったので、Lord Fauntleroyとなり、その息子はHon.と呼ばれることとなります。しかし、彼は「伯爵の生存している三番目の息子」という身分のまま死んでしまったので、そのセドリックも「伯爵の三男の長男」という身分しかありません。たぶん。したがって、我々と同じく彼は:
- Mr Errol
と呼ばれるでしょう。もっとも、彼はあくまで、伯爵家の三男の長子、という身分ですから、社会的な序列は我々よりも上です。伯爵の継嗣が儀礼称号がない、というのは奇異に映るかもしれませんが、原則的にはそういうことになると思われます。記憶に間違いがなければ、いずれ一応確認してみますが。
ということから、伯爵の三男の子で且つ継嗣であるセドリック、すなわちこの場合は、孫である
もっとも彼は高名な伯爵家の跡取りなので、何らかの措置は執られるでしょう。一番あり得そうなのは成人してからKnightに封じられることですが…。
ここで、'Lord Fauntleroy'の移動を一応確認しておきましょう。
- 祖父伯爵(伯爵襲爵までの儀礼称号)
- 長男
- 次男
- … セドリックが襲爵した後、その長男
と、ひとまず、いきなり結論を出した上で、サウスアイランドのポストをフォローアップをここでしてみます。
まず、Hon.の付いた儀礼称号の形は合っています。ただし、上記の通り、Hon.は封筒の宛名でしか用いられないので、普段は'Mr'で呼ばれます。ただし、伯爵の余子(次男以下の男子)がMrで呼ばれる場合、絶えず
- Mr Cedric Errol (軍隊の階級が特にないなら)
- Captain (Cedric) Errol
さて、ここで疑問に思うかもしれません。同じ'Mr'でも「子爵/男爵の長子」の儀礼称号の説明の時や、息子のセドリックは名をつけていないのに、父親のセドリックでは何故絶えず名が付くのでしょう。その違いは、前二者が長男(生存している中で最年長の男子)なのに関わらず、後者が三男だということ。名を抜かした形は長子が帯びるもので、余子の場合は絶えず名を付けて区別をつけます。これも長幼の序を付けたものと言えます。この原則は女子の'Miss'にも当てはまります。
ただし、口頭の時、その場に兄がいない場合、名がない形で呼ばれることがあります。区別をつける必要が無くなるからです。'Mr'で称される身分の三兄弟の内、その場に長兄がいなかった場合、次兄が姓のみ、三弟は名を付けた形で呼ばれます。女子も同様。ただし、これは英国の話で、ぐだぐだな可能性のあるアメリカの社交界などでは、関係ないかもしれません。もちろん、インフォーマルな時は話は別の時もあります。
さて、勘当ですが、原作を見ると、あくまで「家の閾を跨ぐ事は許さん。財産も分けてやらん。わしゃ、もう知らん。出て行け」という事なので、儀礼称号には関係ないように思われます。儀礼称号は、その人の身分、つまりこの場合「伯爵の三男」という事に関わる話です。この勘当ではそこまで効力を及ぼしません。戦前日本の華族はもっと厳しかったと思いますが。
さて、Capt. Cedric Errolの妻、すなわち主人公セドリックの母親ですが、これは伯爵の余子の妻という身分の儀礼称号になります。すなわち、宛名用と普段のものを並立して書けば:
- The Hon. Mrs Cedric Errol
- Mrs Cedric Errol
となります。
この'Mrs'の使い方は「正式な英語における'Mrs'」を参照してください。また、Hon.と'Mr'および'Miss'は並べて書かれる事はありませんが、'Mrs'はある、という事に注目。 死別後も称号は変わりません。しかし、'Mrs Annie Errol'と称される事もあるでしょう。この表記は死別した事を示唆します。
セドリック襲爵後の母親の称号ですが、基本的には変わらないと思われます。しかし、社交界の合意として何らかの称号で呼ばれる事は有り得るかもしれません。しかしそれはある意味で伯爵の母親という事に配慮した一種のあだ名みたいなもので、制度的な称号では内容に思います。。まず、Lady Errolはあり得ないと私は思います。これはpeerの夫人のための形で、いわば特殊・稀少足るべきものです。もっとも適当なものは、おそらく、'Madam Errol'といった形で呼ばれるのではないかと思います。確証はありませんが。これならより儀礼称号的に聞こえます。
例として引き合いに出されたDiana, Princess of Walesの件とはちょっと異なります。あちらは、仮に生きていれば、国王の母親となったわけですから、伯爵の母親とでは重さが違います。また、HRHが許される、といっても新たに新国王がcreate(ここでは宣下と訳しておこう)するわけですから、儀礼的な称号の話とは異なるように思います。また、「HRHと妃たち- 'Princess Diana'論議の補足」で論議していますように、「HRHを剥奪されたのではなく、自然とその身分ではなくなった」という方が正しいです、長ったらしい書き方だったので、読みにくい、わかりにくい記事だったかもしれませんが。
今回、『小公子』をちらちら見て、他に興味深い事も発見したのですが、長くなってきたので、ここで一端やめておきます。またの機会に。
途中まで書いてから間違いに気づいたので、一部書き直しました。ですから論理展開がちぐはぐな部分があるかもしれません。今回のケース、ややこしいので、私にも思い過ごしがあるかもしれません。その辺はご容赦ください。